口座開設の本人確認が激変―画像アップロード廃止でICチップ読み取りへ、再来年4月1日スタート

オンラインで銀行口座を開設したりクレジットカードを申し込んだりするときの本人確認手続きが、再来年4月1日に大きく改められる。現在はスマートフォンで運転免許証やマイナンバーカードを撮影し、その画像データをアップロードする方式が一般的だが、施行日以降はこの“画像送信”が原則として認められなくなり、ICチップ情報の読み取りを軸にした確認方法に一本化される見通しだ。ICチップは改ざんが極めて難しいため、特殊詐欺やマネーロンダリングに悪用される「なりすまし口座」を未然に防ぐ狙いがある。

新しい方式では、利用者がマイナンバーカードや運転免許証をスマートフォンのNFC機能で読み取るか、金融機関側が提供する専用端末でICチップ情報を取得し、氏名・住所・生年月日を自動で照合する。顔認証も同時に行うため、手続き自体は数十秒で完了する。一方で、ICチップ付きの証明書を持たない人に向けては住民票や課税証明書の原本を書留で郵送するなど、従来より厳格な書面手続きが残される予定だ。

金融機関や決済事業者にはこの2年間でシステムの改修とアプリ更新が求められる。既存の「身分証撮影+自撮り写真」のeKYCフローは移行期間中に全面停止となるため、ユーザー向けの周知やヘルプセンターの再整備も急務だ。利用者側も、ICチップが埋め込まれた身分証を用意し、NFC対応スマートフォンを日常的に使う場面が増えるだろう。画像加工による偽造リスクと利便性を天秤にかけた末の政策転換であり、オンライン完結型の金融サービスはより安全かつシンプルな手続きを目指して次の段階へ進むことになる。